簿記の考え方に苦戦したあの頃

簿記

私は30代半ばまで、製造業の技術職として、ひたすら技術の研鑽に力を注いできました。

学生時代から理系分野を専門にしており、会社に入ってからも、仕事で成果を出すには技術力を高めることが何より大切だと考えていたからです。

実際、若いうちはそれで十分だったように思います。ところが、年次が上がるにつれて、技術だけでは仕事を進められない場面が少しずつ増えてきました。

性能のよい製品を作るだけではなく、

  • その製品は事業として利益を出せるのか
  • 投資に見合った成果が期待できるのか
  • 会社にとって、どのような価値があるのか

といった視点も求められるようになったのです。

技術のことだけを考えていればよかった頃とは、明らかに仕事の景色が変わってきました。

そこで私は、技術以外の分野も学んでみようと考えます。
何か新しい資格に挑戦してみよう。

そう考えて選んだのが、中小企業診断士でした。
(自分でもいきなり高い目標掲げたな笑、と思ってます。。。)

結局、試験を受けるところまでは進めませんでしたが、この挑戦が、私にとって簿記を学ぶきっかけになりました。

最も苦戦したのは財務・会計だった

中小企業診断士の勉強を始めて、私が最も苦戦した科目が「財務・会計」です。

理系なので、数字を扱う科目にはそれほど抵抗がないつもりでした。
計算問題であれば、公式や考え方を理解すれば、ある程度は対応できるだろう。
そんなふうに考えていたのです。

ところが、実際に壁となったのは、複雑な計算ではありませんでした。
私が最初につまずいたのは、複式簿記の基本である「借方」と「貸方」です。

資産が増えたら借方。
負債が増えたら貸方。
費用は借方で、収益は貸方。
参考書にはきちんと整理されています。

しかし、初めて簿記を学んだ私には、なぜ取引を左右に分けて記録するのか、なかなか感覚がつかめませんでした。
ルールを読めば、その場では分かった気になります。

ところが、いざ仕訳問題を解こうとすると、
「これは借方だったか、貸方だったか」
と毎回手が止まるのです。

理系の勉強では、原理や数式を理解し、そこから答えを導くことに慣れていました。
一方、簿記には、まず会計上の約束事を受け入れ、その型に慣れなければ先へ進みにくい部分があります。

この違いに、私はずいぶん戸惑いました。

基礎が曖昧なまま先へ進もうとしていた

中小企業診断士の財務・会計では、簿記の基礎だけをゆっくり学ぶわけではありません。
財務諸表、経営分析、投資評価など、幅広い内容が次々に出てきます。

しかし、当時の私は、その土台となる複式簿記を十分に理解できていませんでした。
借方と貸方で迷い、仕訳で手が止まる。
その状態で、さらに難しい財務・会計の問題へ進んでも、内容がなかなか頭に入ってきません。

今振り返れば、当然だったと思います。
土台が不安定なまま、その上に新しい知識を積み上げようとしていたのですから。

結局、私は複式簿記をうまく飲み込めないまま、中小企業診断士の勉強を断念しました。
試験を受けるところまでも進めませんでした。

当時は少し悔しさもありましたが、ここで一度立ち止まったことは、結果的によかったと思っています。
難しい内容に食らいつくことも大切ですが、分からないまま進むより、基本に戻る方が早いこともあります。

そこで私は、改めて簿記3級から学び直すことにしました。

簿記3級からやり直して、少しずつ感覚が変わった

簿記3級では、日常的な取引を仕訳し、それを帳簿へ記録し、最後に財務諸表を作成するまでの基本を学びます。

最初のうちは、やはり借方と貸方を判断するたびに手が止まりました。
それでも、同じような仕訳を何度も解いていると、少しずつ感覚が身についてきます。

現金が増えたら借方。
売上が発生したら貸方。
商品を仕入れたら、仕入を借方に記録する。

初めは一つひとつ理由を考えていましたが、問題を繰り返すうちに、徐々に反応できるようになってきました。

この頃から、簿記は参考書を読むだけでは身につきにくい科目だと感じるようになります。
説明を読んで理解したつもりでも、実際に問題を解くと間違える。
逆に、最初はよく分からなくても、何度も仕訳を繰り返すうちに、後から意味がつながってくることもありました。

簿記は、頭で完全に理解してから手を動かすというより、手を動かしながら理解を深めていく科目なのだと思います。(全ての資格学習に当てはまる傾向かもしれませんが。)

次の壁はB/SとP/Lの作成だった

借方と貸方に少しずつ慣れてくると、次に立ちはだかったのが、B/SとP/Lの作成です。
個別の仕訳であれば、少しずつ解けるようになっていました。

ところが、複数の取引や決算整理事項を処理し、最後にB/SとP/Lを完成させる問題になると、急に難しく感じたのを今でも覚えています。

どの勘定科目がB/Sに入るのか。
どの科目がP/Lに入るのか。
決算整理仕訳をすると、数字がどのように変わるのか。
一つひとつは分かっているつもりでも、全体を通して処理しようとすると混乱してしまいます。

このときも、効果があったのは問題演習でした。
参考書を何度も読み返すより、まず問題を解く。
間違えたら解説を読み、分からない部分だけ参考書に戻る。
そして、もう一度同じ種類の問題を解く。

この繰り返しで、仕訳と財務諸表が少しずつつながって見えるようになりました。
最初から完璧に理解しようとすると、かえって前へ進めなかったと思います。

「分かってから解く」より「解きながら分かる」

簿記の学習を通じて、特に強く感じたことがあります。
それは、参考書を眺めているだけでは、理解したつもりになりやすいということです。

もちろん、基本的な説明を読むことは必要です。
ただ、内容をすべて理解してから問題集へ進もうとすると、いつまでも演習に入れません。

私の場合は、ある程度説明を読んだら、早めに問題を解く方が合っていました。
問題を解く。
間違える。(私の場合、計算ミスも本当に多かった。)
解説を読む。
必要なところだけ参考書に戻る。
もう一度解く。

地味ですが、この繰り返しが一番効果的でした。

簿記3級は受験せず、そのまま2級へ

私は簿記3級の内容を一通り学びましたが、3級の試験は受けませんでした。
基礎がある程度身についた段階で、そのまま簿記2級の学習へ進んでいます。

簿記2級では、商業簿記の内容がより複雑になるだけでなく、工業簿記も加わります。
製造業で技術職として働いている私にとって、工業簿記は比較的イメージしやすい分野でした。

材料費、労務費、経費。
製造原価や仕掛品。

仕事との接点を感じられる言葉が多く、商業簿記より親しみを持ちやすかったように思います。

一方で、商業簿記では新たな壁もありました。
特に最初に苦戦したのが、連結会計です。
親会社と子会社の財務諸表を合算し、内部取引や投資と資本を消去する。

文章にすると簡単そうですが、初めて学んだときは、何を消して、なぜその仕訳になるのか、なかなか理解できませんでした。
(特にアップストリームの取引はお手上げ状態でした。)

簿記3級で借方と貸方につまずいたときと、少し似ていたかもしれません。
それでも、仕訳の意味を確認しながら問題を繰り返すことで、徐々に処理の流れが見えるようになりました。

そして、2026年6月に日商簿記2級へ合格します。

理系だから簿記に強いとは限らない

簿記を学ぶ前の私は、理系で数字にも慣れているため、会計も比較的スムーズに理解できるのではないかと思っていました。

実際には、かなり手こずりました。
簿記の難しさは、計算だけではありません。
借方と貸方に分けて取引を記録する考え方や、会計特有のルールに慣れる必要があります。

これは、数学が得意かどうかとは少し違う話です。
理系であっても、初めて簿記を学ぶなら仕訳で迷って当然です。
B/SやP/Lの作成に抵抗を感じることもあります。
連結会計を何度解いても理解できず、嫌になることもあるでしょう。

ただ、最初に分からないからといって、簿記に向いていないとは限りません。
単に、その考え方にまだ慣れていないだけかもしれないのです。

初めて学ぶものは、難易度に関係なく手こずる

簿記の学習を通じて、私は改めて、初めて学ぶものは難易度に関係なく手こずるものだと実感しました。

簿記3級は、一般には入門資格と位置づけられています。
それでも、複式簿記を初めて学ぶ人にとって、借方と貸方は決して簡単ではありません。
入門資格だから、すぐに理解できなければならない。
理系だから、数字の資格は簡単に取れるはずだ。

そんなふうに考える必要はないと思います。

私自身、中小企業診断士の財務・会計では一度挫折しました。
その後、簿記3級の内容から学び直し、問題演習を繰り返したことで、最終的には簿記2級まで取得できました。

遠回りにはなりましたが、基本へ戻った経験は決して無駄ではありませんでした。
借方と貸方が分からず、簿記の学習をやめたくなっている人もいるかもしれません。
そんなときは、参考書を読み続けるだけでなく、基本的な仕訳を何度も解いてみてください。

最初は間違えても構いません。

解きながら少しずつ慣れていく。
私にとっては、それが簿記を理解する一番の近道でした。

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